射手座の魂

はばかりながら はばかる 虚言・妄言・独り言を少々たしなみます

タバコ止めて良かった

喫煙者にはつらい世の中になった。どこもかしこも禁煙分煙とやかましく言われる。職場の施設も完全禁煙である。しかも条例で路上喫煙も禁止された。合法的にタバコを吸うには遠くのコンビニ内の喫煙室を利用するしかなく短い休憩時間では行けない。とはいえ今では人ごとである。タバコを止めたからだ。禁煙に成功して5年ほどになる。

20代の頃は「タバコを止めるくらいなら死んだほうがマシ」と考えていた。その頃はまだ飛行機でもタバコを吸えたし新幹線の禁煙車も少なかった。街の至る所に灰皿があったし、駅の灰皿がプラットホームの端にあることすら怒っていたぐらいだ。子供の頃はホームのどこでもタバコが吸えて線路上は吸い殻だらけだったのに、吸う場所は追いやられ喫煙者は虐げられていると思ったのだ。

仕事上喫煙率が高かったので、喫煙所での会話が欠かせないものと考えていたし、タバコ自体やライターへのこだわりはコミュニケーションを円滑にするツールでもあった。買うタバコはニコチンの強いものになり、最終的にはロングピースを吸うようになった。

30代に入り異変が起きる。喉に痰が絡むようになり、冬になると慢性的な鼻詰まりになった。耳鼻科にいったら、もともと鼻の空気の通り道が狭い上に喫煙が良くないといわれ、手術をしますか、禁煙しますかと聞かれた。ハイ禁煙しますと即答した。手術は痛そうでいやだ。

喫煙するにあたり色々調べてみた。人間の脳ではアセチルコリンという神経伝達物質を作り出し情報伝達が行われる。喫煙するとニコチンがアセチルコリン受容体を介してアセチルコリンに取って代わってしまう。これが続くと脳がアセチルコリンを作らなくなってしまう。ニコチンなしには脳の情報伝達がうまく行われなくなるのだ。禁煙してしばらくすれば、脳がアセチルコリンを再び作り出すようになる。禁煙でそこを超えるのが大変という。これを知ったときタバコは単なる嗜好品ではなく麻薬のようなものと思った。

結局拍子抜けするくらい楽に禁煙できた。「絶対タバコは止めない」を「絶対止める」にひっくり返したわけだ。「やろうと思えばいつでも禁煙できるんだよね」という人のほうが止められない気がする。

止めてみたらメリットばかりである。金はかからない、部屋の空気は汚れない、喫煙所を探してさまようこともない、時間に余裕ができるなど。そして冬場の鼻や喉の不調もなくなり、体も軽い。デメリットは、人生に欠かせないものとしてタバコを吸ってきたのに、簡単に禁煙できてしまい後ろめたさを感じることである。

そして世の中が禁煙ファシズムともいえる喫煙者に厳しい状況にまでなるとは思っていなかった。タバコは肺がんの原因と言われているがそこまでの因果関係はあるのだろうか。大気汚染という要素もあるはずだ。長寿の秘訣はタバコと言う高齢者もいるじゃないか。そこまでけしからんと言うなら、禁煙法を制定するべきだし、公然と売ってしかも税金を課すなら喫煙者の人件も尊重すべきだ。

もし今だにタバコを吸っていたら、この理不尽さに耐えきれずテロリストになっていたかもしれない。タバコ止めて本当に良かった。