空転日記

はばかりながら はばかる

NHK「朝鮮戦争秘録」を観ての感想

録画してあったNHKスペシャル「朝鮮戦争秘録〜知られざる権力者の攻防〜」を観た。

米朝首脳会談が行われようとしている現在、なかなかタイムリーな内容ではある。

 

新たにNHKが入手したという秘密文書をもとに、朝鮮戦争当時の金日成、毛沢東、そしてスターリンの思惑や策略、強大で無慈悲な戦力でそれに立ち向かうアメリカ、そしてそれに協力した日本、という構図を明らかにするというのが番組の趣向である。

 

まず感じる違和感は、新たに入手した秘密文書が高級住宅地に住む中国人研究者の私的な資料であることだ。NHKがこのような中国人と接触するにあたって中国共産党が仲介しないはずがない。そして映像で見る限り、個人的に集めたとされる資料は手書きが多く、それらが真実のものかという客観的な裏付けには触れない。

 

明かされる朝鮮戦争勃発の経緯は、「南北統一」のために南進したい金日成、それを利用し権益を手にしアメリカを牽制したいスターリン、当初傍観しているが巻き込まれてゆく毛沢東、という構図になっている。

そして対抗するマッカーサーを指揮官とするアメリカは無差別な空爆を行い朝鮮を焦土にし、ソビエト領内も含め原爆投下計画まで立案していたという。

 

出生からして謎が多いとされる金日成は、生まれこそ北朝鮮の万景台とされるが、すぐに中国に移住し、独立運動家としで抗日パルチザン組織に参加していた。その後ソ連に越境しソ連軍に所属し、訓練と教育を受けた。

1945年、ソ連軍が北朝鮮に侵攻し38度線以北を占領する。その時に金日成はソ連軍艦に乗って北朝鮮に帰国を果たす。「ここどこ?」であっただろう。そして新たに組織された朝鮮共産党の書記長に就任する。北朝鮮の人々からすれば「この人だれ?」であっただろう。金日成はソビエトの操り人形でしかなかったはずだ。しかしこの番組では金日成は南北統一に燃える若き指導者でソ連から支援は受けながらもスターリンと対等に渡り合っていたかに説明される。しかし結果はスターリンに利用され、そしてその南北統一への思いがのちの核開発に繋がってゆくという流れになっている。だいぶ北朝鮮の側に寄りすぎのプロパガンダ感がある。

 

そしてアメリカ(正確には国連軍なんだが)の原爆使用計画を含め、その軍事作戦の非道をクローズアップする。もちろん米軍が行った無差別空爆はあってはならない犯罪的行為である。しかし対する北側だってそれなりに非道なことをしたはずで、それが戦争である。しかし北朝鮮軍の兵士から取材して聞き出すのはアメリカの圧倒的な軍事力に蹂躙される祖国や朝鮮人民の哀れである。こういうところも北朝鮮の側に寄りすぎである。

 

そして「朝鮮戦争秘録」の最大の驚きは朝鮮戦争における仁川上陸作戦に多くの日本人が参加していたという事実だ。南進してきた北朝鮮軍を挟撃するため、大量の兵力と軍事物資を艦艇で仁川に上陸させソウル奪還の足がかりを作ったこの作戦に、艦艇の船員として2000人あまりの日本人が参加していたというのである。

 

現在の海上保安庁にあたる組織が掃海作業を行い戦死者も出ているというのは有名であるが、この話は聞いたことがない。とんでもない内容だし、これについて特集番組を製作してもいいくらいだ。しかし歯切れが悪い。上陸作戦に従事していた元船員の証言は、「戦争だなんて思っていなかった」である。まだ戦争の記憶も生々しく、しかも米軍の艦艇で軍事物資や兵隊を運んでいたのに?それに2000人も従事していたのだから証言は他にも豊富にあるはずではないか。もっと事実を掘り下げるべきである。

 

「朝鮮戦争秘録」は知らなかった事実もあったし考えさせられる番組であったが、どこまで客観的な事実の裏付けがあるのか気になるし、中国北朝鮮におもねっているのではないかと感じられる内容であった。