空転日記

はばかりながら はばかる

もやもやする日本「出身」横綱

進退のかかる初場所で初日から連敗し横綱稀勢の里が苦戦している。僕は相撲にさほど興味はないので勝敗は気にならない。

気になるのは稀勢の里を紹介するとき日本出身横綱と呼ばれる事である。稀勢の里は長くモンゴル勢に独占されている相撲界で、久しぶりに誕生した日本人横綱である。その前の日本人横綱は武蔵丸である。武蔵丸はハワイ出身で日本に帰化した。帰化後横綱になっているので、武蔵丸は正真正銘の日本人横綱である。しかしそうは言われない。武蔵丸は除かれ、稀勢の里は若乃花以来の日本人横綱と解釈される。

「武蔵丸は日本国籍だが力士になったときは米国籍だったし、アメリカ出身だから、日本人横綱としては認めにくいので出身地主義をとろう」ということである。なにか腑に落ちないしもやもやする。武蔵丸は日本に骨をうずめるべく生きてきたのだから失礼だ。

これは横綱だけではなく、一般の力士も同じで「日本出身力士」と呼ばれる。

取組前に出身地がアナウンスされる。仮に帰化していても「ハワイ出身~」と紹介される力士は日本人として認められないというのはおかしい。

とはいえ生まれた土地の文化がその人柄を育てるのは間違いなく、出身地を国籍より重視する、というのは心情的には分かる。そして相撲はあくまでも日本の国技であり保守的なので考え方が日本人中心になってしまうと漠然と解釈している人が多いだろう。ただ少なからず疑義を呈する人はいるはずで、NHKを始め大手メディアがそれを黙殺しているのも気持ち悪い。

心情的な出身地主義とも言える対応だが、他の理由があるように思える。

それは在日韓国朝鮮人力士の立場を忖度するためではないか。日本に生まれ育ち相撲界に入っても帰化しなければ韓国朝鮮籍である。しかし通り名を使っていれば出自を隠すこともできる。公表していない力士もいるだろう。「日本人横綱」「日本人力士」という言い方は彼らにとっては都合が悪いのである。「日本出身」と呼べば日本人とまとめることができる。

朝鮮出身力士として名高いのは力道山は出自を公表することを拒んでいたという。相撲界では力道山に対する民族差別があったとされている。その後力道山はプロレスで活躍し大スターになる。そういった歴史が在日韓国朝鮮人に対するある種のタブーを作ってきたのではないか。

プロ野球界も在日韓国朝鮮人や帰化人が多い。野球協定においては日本の学校に通算3年以上在籍したものは日本籍を有するものと同等の扱いを受けることができる。仮に在日韓国人であると公表していても外国人枠には入らない。

プロ野球選手が引退後、放送局のキャスター職や試合の解説者になるためには、名球会メンバーの肩書きが重要であったとされる。メディアも名球会の権威づけに協力し、ブレザー贈呈式というアホな儀式を嬉々として放送してきた。その名球会を長く牛耳ってきた金田正一氏は組織を私物化し不透明な金の使い込みなどから名球会代表から追い落とされた。大手マスコミはほとんど報道しなかったと記憶している。ワイドショーの格好のネタなのに不思議である。いったい何に忖度したのだろう。

日本で育った在日韓国朝鮮人や帰化人が、様々な分野やスポーツ界で日本人と同等に活躍できる場を得ることは当然賛成だ。しかしこういった特例的対応があまり公にされず、もやもやする状態が続くのは良くないし、これが互いに新たな差別や対立を生む可能性もある。

このような問題はおおっぴらに議論の対象すべきだと思う。これはレイシズムでも差別でもない。おかしなタブーを無くすためである。