射手座の魂

はばかりながら はばかる 虚言・妄言・独り言を少々たしなみます

海外の出羽守って「こじらせ愛国者」なのでは

最近SNSなどで「出羽守(でわのかみ)」という言葉を目にするようになった。
はて何のことやらと調べてみたら「海外の習慣や事柄を引き合いにして日本を貶すような言動をとりがちな人」のことであった。本来は律令制下の出羽国の役人を指す言葉である。「海外では~」と始まり「それに引き換え日本は~」となるかららしい。おお確かにその手の人は多いなあ。

ドイツ在住のジャーナリストで、ハイキングをしていたらドイツ人から「なせ日本の裁判所は東電の元幹部を無罪にしたのか」と聞かれ「世界が日本を見る目は厳しい…」と思った変な人がいる。一般的なドイツ人がそんなに日本のニュースに詳しいとは思えず架空のドイツ人をした仕立て上げ「それに引き換え日本は~」と腐す手法と推察される。
アメリカ在住の元社会学者で「基本的馬権」というパワーワードを爆誕させた方のツイッターも、何かに付けて「日本は遅れている日本はダメだ」のオンパレードである。

なるほどこういった手合いが出羽守なのかと納得したのである。
なぜ海外で活動する日本人が出羽守になりがちなのか?

本当は日本が大好きなのだが、海外に行ったとき日本が悪く見えたり日本人なんて相手にされなかったりしてひねくれてしまったのではないか。その不満が日本に対するバッシングとなってゆくのだ。自身のコンプレックスの裏返しの行動とも言える。えーとつまり本当は愛国者なのだ。こじれてますが。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ著)を読んだ。著者であるブレイディみかこはイギリスブライトン在住。アイルランド人男性と結婚し息子さんが1人。イギリスの学校に通う息子や家族の思いを丹念に追う良質のルポである。

ただ読後に気になった点がある。作中でイギリスの差別問題についてふれているが、著者であるブレイディみかこさんは日本人(アジア人)なので、差別や無理解に常に直面しているのだろうが、自身に対する差別問題、その点が書かれていないのだ。白人と結婚しているというのもあるだろうが、差別問題を「白人の側」からしか見ていないように感じた。

世界では日本人を含むアジア人は黒人より低い地位と見られる国もある。
日本人は先進国であるし円は機軸通貨でもある。それでも日本人は国によっては差別される側なのである。

アメリカで吹き荒れたBLM運動を、ニュースでみると日本人は黒人を差別してはならぬと「白人の側」で考えがちだが、そんなことはない。日本人は黒人より地位の低い被差別者なのだ。現在アメリカで吹き荒れるアジア人ヘイト運動からも明らかであろう。

海外の出羽守の皆さんは、白人の気分で海外に行ったら差別される側だったという現実の突き当たり、こじらせてしまった愛国者の成れの果てなのではないかと思う。嫌い嫌いも好きのうちなのだと思えばよいのだ。