10代の頃からラジオが好きである。
家にいるときは何かしらラジオをかけていた。基本音楽を聴きたくて聞いているのでFMを好んでいた。東京FMが多かったな。J-WAVEは今と違い洋楽が中心だった。FM横浜はおしゃれだが距離がありノイズがのるし、天気の悪い日は聞けなかった。
CDラジカセにカセットテープをセットしておいて、めぼしい曲がかかるとすかさず録音していた。
できたばかりのBAYFM(千葉FM)は深夜に「サイバーテレフォンリクエスト」という長時間の番組をやっていて、これが録音に最適であった。
その日の音楽チャートの下位から上位までの曲を淡々と順番に流してくれる。よかったのは、順位と曲名を読み上げたあとに曲が流れ始めるので、イントロにDJの余計な声が入らない。ラジオを録音する「エアチェック」には最高であった。
何の番組だか忘れたが、ゲストにデビューしたばかりのミスターチルドレンのメンバーが出てきたことがあった。勉強をしながら聞いていた僕はその曲を聴いて「なんか鬱陶しい曲だなこりゃ売れないわ」と思った。それがメンバーがギリギリガールズと結婚するくらい出世したのだから分からないものだ。
ただのおっさんのノスタルジーなのだが、あの頃はラジオはたしかに文化であったと思う。ラジオをテーマにした楽曲も多かった。佐野元春「悲しきレイディオ」QUEEN「Radio Ga Ga」徳永秀明「壊れかけのRadio」大江千里「ラジオが呼んでいる」などなど。ラジオという媒体が魅力的だった証である。
20~30代は仕事が忙しかったこともありラジオを聞くことは無くなった。
そして40代にはいると再びラジオ熱が復活する。インターネットラジオ「ラジコ」のせいである。ノイズもないし、AMでも高音質である。かつては音の悪かったAMはトーク中心でFMは音楽中心と別れていたのだが、その意味も無い。
2028年までにAMラジオのFM転換も検討されているという。
インターネットによってラジオは復活したともいえるが、インターネットという過酷な戦場でYouTubeやSNSと戦わなければならなくなったのだ。
ラジオもスポンサー離れが進んでいるのだろう。失礼ながらラジオCMは昭和のままである。そういった根本的な古さやが隠せない。かといって柔軟に新しいものを求めるというのでは純インターネットメディアにはかなわない。
TBSラジオでは、午前中に伊集院光の番組「伊集院光とらじおと」をやっている。
「伊集院光のらじおと」の前にやっていたのは、怪物番組「大沢悠里の悠々ワイド」である。そこでの毒蝮三太夫はセクハラ言いたい放題で、お年寄りを中心に人気だった。お年寄り相手に「ばばあ」だの「死にぞこない」などマシンガンのようにじゃべりまくるが聞き上手でなんだかんだ思いやりもある。今ではコンプライアンスの問題もあるのだろうが現在の作り手が学ぶ点は多いと思う。
伊集院の番組でも毒蝮三太夫のコーナー復活すればいいのにと思う。伊集院からすればそういう昭和の怪物を断ち切り、新たに面白い番組を自分の手で作りたいという意識が高いのだろうが、それが裏目に出ていると思うのだ。伊集院の首に鈴をつける人が必要なのだ。「ラジオの皇帝」なんて云われるようになったら終わりでしょ。そのうち「裸の帝王」になっちゃうよ。
ラジオもテレビもかつては新しいものだったのだが、すっかりオールドメディアになってしまった。ここは開き直って古さを売りにしたら少しは延命できるのではないかと思う。