射手座の魂

はばかりながら はばかる 虚言・妄言・独り言を少々たしなみます

やりがい搾取の声優業界が作ったインボイス反対アニメ 

#VOICTION というツイッターアカウントがある。
インボイス制度に反対する3人の声優が立ち上げたとのこと。そこでインボイス制度の理解のためにアニメを作ったというので視聴した。


www.youtube.com

いきなりずっこけたのだが
「インボイス制度?なにそれ知らねー」
「簡単に言うと消費税の増税だよ」
出だしからこうである。なんとも簡単に言いすぎである。

フリーランスへの報酬に本来は納税すべき消費税が含まれている(免税事業者なので消費税分を受け取らないとしてきた人は別だが)。

今まで小規模事業者は消費税の納税を免除されており、それを収入と見なしてよかった。「益税」と呼ばれる所以である。課税業者になるとその消費税の納税義務が生じる。

今まで免除されてきたものを払えということなので消費増税ではない。実質増税と主張したいのは理解できるが、事実と違う印象操作であるといってよい。

自分たちはこのような印象操作を行いながら、今まで免除されてきた消費税を「益税」とか「預かり金」であるという指摘はデマである、と一蹴するのは不誠実な態度である。こういう主張をしてしまうと誤解を招き理解は進まない。切実な声も届かない。

声優は声が命である。それは生まれ持ったものが大きい。

ぶっちゃけ演技が多少下手でも声が良ければ仕事にありつける。努力ではどうにもならないのが現実である。ところが人材はいくらでも量産され業界に送り込まれる。

大物の声優が声優を育成するために学校を創設し声優学校が乱立している。そこからどんどん巣立ち、努力だけではどうにもならない業界にワンサカ入ってくる。

声優業界の7割が年収300万以下で、インボイス制度が実施されたらそのうちの3割が廃業を検討するという。インボイス制度が大きな打撃を与えることは明白である。

とはいえインボイス以前に歪な業界である。

この若手への待遇の悪さがアニメ業界を支えている。日本が誇るアニメーションの製作現場においては薄給で働いてくれる若手声優の存在が欠かせないからだ。ベテランを支えているのは薄給にあえぐ若者であり、やりがい搾取である。そしてそれを問題視する意見は業界内から聞かれない。

インボイス制度に反対する最大の理由は、これをきっかけに若者がいなくなると現在のアニメ業界の構造が壊れてしまうからではと勘ぐってしまう。

この搾取のありようは演劇業界や映画業界なども共通である。そのなかでベテランは保身しか考えていない。これでは彼らが批判の対象とする政治家連中と同じである。