コロナ禍においてライブエンターテイメント業界が苦境に立たされている。
とりわけ小規模ライブハウスや小劇場などは存亡の危機と聞く。
ライブハウスはチケット収入だけでなくドリンク代も収入の柱である。観客数を減らし有観客で開催しても、酒類の販売ができないのではなお成り立たない。ここまでコロナウイルスの直撃を受けた業界もないのではないか。
フジテレビで放送された「磔磔(たくたく)ライブハウスとコロナの500日」を見た。京都の老舗ライブハウスがコロナウイルスによって翻弄され続けた日々を記録したドキュメンタリーである。
二代目店主の挑戦や葛藤、そして無観客ライブに出演する主演者のインタビューなどで構成されている。驚いたのが出演者の顔ぶれである。
くるり、竹原ピストル、大友良英、鈴木茂、鈴木慶一、近藤房之助、元ボガンボスのDr.kyOn、鮎川誠、憂歌団の木村充揮などなど錚々たる顔ぶれである。
それぞれに磔磔という「箱」に対する愛情が感じられるし、ライブ映像もたっぷり流れるのでとても良い。
とはいえ、出演者は「おじさん以外おじいさんなの」という印象である。音楽の方向性も含めて高齢化している。ターゲットの観客層も高齢化しているということだよねえ。
昔はこういう音楽がカッコよかったんだよという保守感がすごいし、時代に突きつけるメッセージに欠ける気もする。これではおじさんの懐メロ大会である。
怒られるかもしれないが、ネットを中心に流行ったAdoの「うっせいわ」の方が先鋭的でむしろロックだ。
コロナの影響は甚大だがいつかはかならず再開できるし、配信ライブというジャンルもあるし活路は見出せる。番組もそこまでの悲壮感はない。
悲壮感を感じたのは、「コロナがなかったとしても、業界の高齢化が衰退をもたらす」と思えたことである。
さて小劇場はどうか。日本は多くの小劇団があり世界でも有数の演劇大国なのだ。実際はその中で食える人はほとんどいない。みんなフリーターです。
かつてはやめる人も多かったが始める人も多かった。
2000年代になると入ってくる人は減ってきたが、40代50代はやめないのでなんとか業界の市場規模を保ってきた。
ここにきて高齢で仕方なくやめてゆく人が増え、新しい人材は入ってこないという高齢化が進む状況となった。そこにコロナ渦である。
このままではライブハウスと同じように衰退してゆくだろう。
小劇場演劇は特殊な業界構造をしていて、いわゆる劇団関係者がお互いの客でもあるのだ。演劇人の数=市場規模なのである。演劇の担い手が減少することはお客さんの減少と同義なのだ。
もうひとつ重要なことは、バンドにせよ劇団にせよ出発点になっているのは、大学のサークルだったりする。
その大学のサークル活動が壊滅しているのだ。4年生になると引退するので実質3年間の活動中、コロナの影響で2年間ほとんど活動していないし今後も不透明だ。ライブや公演自体のノウハウがなくなってしまった。
バンドや演劇を始める重要な受け皿がないので、結果その道を志す人も激減するだろう。
ライブハウスにせよ小劇場にせよ、コロナによって少し早まっただけで衰退するのは必至であるといえる。そして不遇の原因をコロナだけにしてしまうとますます苦境に立たされるのではないか。
必要なのはインターネットなどを活用した収益の確保。そして1番は若い人を振り向かせることだと思う。