壁の中で暮らす人類と巨人たちとの戦いを描いた「進撃の巨人」。
物語の後半では、壁の外の世界が描かれ、今まで正義だった主人公たちは悪になる。
戦争状態ではそれぞれに正義がある。自分たちの国や生活を守るためなら、他国民を虐殺することも正義となる。誰しもが納得する善悪なんてないし、話し合いで解決できないことばかりである。作中の登場人物は常に悩み苦悩する。
こんなシーンがある。
巨人との絶望的な戦いに挑むにあたり司令官が兵団を前にして演説する。
この戦いに負ければ人類は土地を奪われる。すると狭い土地で食料の奪い合いが起き人間同士の争いで皆死ぬことになる。ならばここで戦って死ねと。
お国とか家族とか大義のために死ねというのではない。戦って巨人に食い殺されるほうがマシだということである。
おそろしい漫画だ。これが少年誌で連載されていたのだから本当に凄い。漫画、アニメは日本の誇る文化だと痛感する。日本映画界は腐ってますが。
ウクライナ情勢を巡り専門家やジャーナリストの意見をよく耳にする。メディアで主流となっている論調は反ロシアでウクライナに同情的である。高度な専門性を有しているとはいえ軍事専門家や国際政治学者だって実際に戦地に行ってはいないわけだし、ポジショントーク感もあるし信頼に値するかは分からない。
一昔前は軍事評論家なんかは紛争時に出てくる変人扱いであったし、保守系の論客も地位は低かったわけで、その層のリベラルに対する復讐が始まった気もする。
もちろん先に侵略を開始したロシアが悪いのは分かるし、無慈悲な攻撃も非難されるべきである。しかし玉砕覚悟で国民に戦いを強いるウクライナのやり方にも賛同できない。もともとウクライナも親ロシアと反ロシアに分裂しており不安定で、ロシアの侵略大義名分を与える土壌があったというのもある。僕もロシアが悪いと考えているが、判断を保留している部分もある。
「進撃の巨人」を多感な10代で読んだ若者はウクライナ情勢やそれにまつわる報道をどう思っているのだろう。専門家やメディアが作り出す言論より、「進撃の巨人」のほうがリアルに戦争の悲惨な側面を描ききっていると思うからだ。
ああ今の若者はテレビ見ないんだったと気づいた。SNSも自分にとって必要な情報しか拾わない。なるほど若者はどんな方向であってもプロパガンダに流されにくいといえるだろう。ならば日本の将来は明るいと思う。