コロナ禍のためその開催に賛否が渦巻いたフジロックフェスティバルが終わった。
ありがたいことに3日間にわたるステージはYoutubeでライブ配信された。目当ての平沢進が見られたのでありがたい。
平沢進はリリースしたばかりの最新アルバム「Beacon」を引っさげ、バーコード頭の異形のサポートメンバー「会人(えじん)」の2人とドラマー・ユージレルレカワグチを従えて登場した。
1曲目が最新アルバムからカバー曲「Cold Song」であったように、2019年のフジロック出演に比べるとドライブ感を抑えめにした、「聴かせる」ライブだった。
それでも「Big Brother」「救済の技法」と畳みかけられたら、たまらない。1番良かったのは「HOLLAND ELEMENT」である。電子音がカッコいい。ワタクシ中二なので。
最近平沢進について語る際に避けて通れないのは、平沢進は陰謀論者なのではないかという問題である。
ツイッターでは独特の語彙でフォロワーを煙に巻くようんなセンスを発揮しているが、たまに怪しさを匂わせる。マスクもしないし、「コロナはインチキ」で世界中が騙されているだけだと考えている節もある。そして現在陰謀論はタブーである。
しかしだ、稀代の音楽家平沢進が、普通の人と同じ凡庸なことを考え、それを実行していたとしたら今のキャリアはない。普通から距離を置き、普通と戦ってきた人なのである。アポロは月に行っていないとか石油が有限であるなんて嘘であるとか、陰謀論的なメッセージを曲に込めてきた前科もある。
平沢進は陰謀論者です。
宗教っぽいなどとも云われるがそんなもんじゃありません。もっとヤバイのです。
思想的には危険な匂いがプンプンするのだが、楽曲的にはそのエッセンスを「匂わせる」程度に留めているバランス感覚がすばらしいと思う。
そして根底にあるのは、たとえ良からぬ陰謀に振り回されたとしても人間は最終的にはよりよい人間性を獲得するだろうし、必ず良い方向に進むだろうという肯定感である。それは陰謀論的見方を吹き飛ばす力を持っている。
フジロックのアンコール曲は「庭師King」であった。
この名曲はアルバム「救済の技法」に収録されており、誠実に仕事に打ち込む庭師の姿を壮大に歌い上げている曲である。ユーチューブにあるので気になる方は聞いてください。壮大すぎて魂消ます。
「救済の技法」というアルバムは医療や救済がテーマとなっている。
強烈なイントロから始まる「TOWN-0 PHASE-5」は精神障害者からみた現実社会、「橋大工」は出産がテーマだと思っている。
そして「庭師King」のテーマは人間の「免疫」や「自己回復機能」だと考えている。
内的、外敵に攻撃を受けても、防衛し回復してゆくことが人間に必要なのだ。その人間に内在する能力を庭師になぞらえているのだと思う。陰謀論を匂わせつつ、アフターケアも万全なのだ。
フジロックの最後にこんな曲をもってくるなんて、ヒラサワはやさしい陰謀論者なのだ。